夜明けまえ
- A
- 2020年5月11日
- 読了時間: 1分
蜜柑の花は風に乗り
ベランダの木々は青く色づいた
シャツの隙間から漏れた月は
夜毎に丸みを帯びて
まんまるに膨らみきると
固まり切らない卵色でじっとしていた
筈なのに
ほんの僅かに目を離すと
ずっと遠くのほうから
地上を突き刺した
五月、途端に
ヘアーオイルのカプセルが柔らかく溶け出した
髪が
うねる
街を飲む夕暮れと
白む鳥たちの声は
少しづつ近づいていった
限りなく鮮やかな感触に
ここにあることを確かめる
わたしは
元きたところへ戻れるだろうか
わたしは
きっと戻れない
Comments