忘れてはいけないことと忘れたいこと
- A
- 2023年10月4日
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大学を受験すると決めたとき、
大学で出会える友達は一生物だよ、と高校の先生が言った。
ずっと友達は数えるほどしかいなかった。
誰が友達で、友達じゃないのか、私にはわからなかった。
私は友達がほしかったし、勉強は苦手だった。
覚えようとしたことは瞬く間に溢れ出して、頭はいつも真っ白だった。
好きなことで大学に行って、友達が欲しかった。
パニックになるなよ、と誰かが言った。
その言葉だけが頭の中に鳴り響いた。
ずっと普通になりたかった。
人に声をかけて、目を見て話をしたかった。
友達の大事なものを知って、私の大事なものを知ってほしかった。
たったそれだけができなかった。
数年前のことは、ほどんと覚えていない。
人に大切にされていたことや、人を傷つけたこと
忘れちゃいけないことは忘れてしまうのに
苦しかったこと、悲しかったこと、忘れたいことばかり覚えている。
だけど4月になると思い出すひとがいる。
音楽を聴くと思い出すひとがいる。
大事なものを教えあったひとがいる。
何年も連絡を取っていない。
友達とは言えないかもしれない。
だけど
今でもときどき、遠く、先のほうから顔を出して心をあたためてくれる。
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