午前2時のわたしたち
- A
- 2020年3月21日
- 読了時間: 2分
午後9時。
夜ご飯を済ませたばかりのすこし散らかったテーブルを囲んで、母親たちが話している。
耳をすませると、「だめ。大人になったらね。」と笑う。
「大人になったら教えてもらうこと」がまたひとつ増えた。
わたしたちはするりとリビングから離れる。
午前0時。
わたしたちは息を潜めている。
目を覚ましていることに気づかれてはいけない。
わたしたちはうっかり寝てしまったのだ、と伝えたい。
パソコンの隅に浮かぶ消えてしまいそうなほどちいさい数字に、やけにドキドキしてしまう。
笑い声は遠くにきこえる。
午前2時。
部屋の電気はとっくに消している。
身を寄せ合ってパソコンデスクに乗り出すと、たくさんの顔が青白く瞬く。
さっきよりずっと静かに笑い合う。
そして、どうかこの夜がずっと続いてください、と祈る。
けれども廊下のドアのひらく音で、わたしたちの夜は遮られる。
かつて、午前2時というのは特別な時間だったように思う。
大人になった今、「大人になったら教えてもらうこと」は未だにきけていないし、
特別だった午前2時は生活の一部になってしまった。
そして夜は永遠ではなく、そう遅くないうちに朝がくることを知った。
いつも通りの朝に救われる日もあるけれど、かつては終わらない夜に焦がれていたはずだ。
わたしはちゃんと大人になれたのかなぁ。
どんな大人でもなく、今もまだそこいるはずのわたしたちに教えてほしい。
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