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今日の夢

  • 執筆者の写真: A
    A
  • 2019年4月12日
  • 読了時間: 2分

母が一人で都内に引っ越してきた。二人で歩いて、今日から住むという母の家へ向かう。

道すがら、はじめて会う、しかし私の知る二人と仲良くなり、一緒に歩いた。


家の下に着いた。

折り返して駅まで見送りにいく、と母に伝え再び道に出ると、空は低い雲に覆われ雨が降り出していた。

傘は、私の折り畳み傘だけだった。三人では入れない。私は二人に折り畳み傘を渡すと、傘を借りるために母を追いかけて家の中に入っていった。


建物の中は薄暗く、数本の蛍光灯しかついていない。

4階とだけ聞いていたがエレベーターはない。入り口を入って正面に、コンクリートの階段が渦を巻いている。

階段の端には細いレールがひいてあって、その上に簡易的なトロッコが止まっている。乗り込んで、4階、と呟くと(周りには誰もいない)、トロッコは内側の壁に沿ってゆっくりと進み出した。


2階。壁のないワンフロアに、いくつかのカーテンが吊るされている。

たくさんの、じっとりとした視線を感じる。人が暮らしているようだ。


3階。ダンボールのような薄い壁の端はすべて階段を向いている。壁と壁の間には薄いカーテンがかけられていて、窓には暗幕をつけているのか、外の明かりがほとんど入っていない。それは深い雨のせいかもしれない。

ここにも人が暮らしている。私はだんだん不安になる。


トロッコは4階で止まった。

よかった。ドアがある。そして、目の前のドアをノックする。

中から母が出てきて、手短に引越しの片付けの成果を報告する。「ちょっと狭いけど、今夜から大丈夫そうだよ。」


母に傘を借りた私は、再びトロッコに乗り込み友人を追いかけた。思ったより、時間がかかってしまった。


外に出ると相変わらずの雨だった。

待たせていたはずの場所に彼らはいない。

もう帰ってしまったか。


そう思いながらも歩いていくと、そこは彼らの家だった。私にはわかった。声をかけても中にはいない様子だ。

ドアが開いた。覗き込むと、水を張った洗面台の中に私の貸した折り畳み傘が浸かっていた。

水には、傘の色が滲んでいる。

洗ってくれたのか。と、私は思った。


傘はそのままに、私は来た道を帰った。

さっきまでいた家の前に着いて、空を見上げる。ああ。今夜はここで過ごすんだ。気乗りしないな。


同じようにトロッコに乗り込むとそれはひとりでに動き出した。きっと、行き先はトロッコが知っている。そう思う。


それなのに私は、ここが何階なのかを見失ってしまう。


ーートロッコが止まった。さっき止まった場所とは違うところだ。

トロッコを降りて、同じドアを探す。ドアはどこにもない。

そこにあるのは無言の視線だけだった。

 
 
 

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